轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
みみこうすい
耳香水
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,465 字 · 29 页
女の権幕に怖れたのでしょうか、男は吃るような口調で声まで少し震えを帯びて聞えました。
『だって――、僕の時計が遅れていて――』
『オホホホホ。また時計に罪をなすりつけるの? 調法だわね。でも貴方の腕時計嗤っていますよ。冤罪ですなあって』
女はヒステリックな声で嘲笑するのです。
『逃げ出したって云うけれど、あの場合、僕が顔を出しちゃ拙い。お互のため、殊に貴女のためによくないと思って――』
『オホホホ、うまい事を仰しゃる。大層御親切様ね。でももう、その御親切の押売は買いませんよ。永い間の偽せ親切、私はそれに満腹しちゃってるわ』
『そう誤解されちゃ物が云えやしない。ねえ奥さん。もう少し気を落付けて、僕の云い分も聞いて下さい』
『もう沢山。詭弁を弄したって、徒労よ! 私の気持はすっかり貴方を離れちゃった。醒め切った女に未練を残さないで、貴方もさっさと転向をやったらどう? キールン・ホテルで私に背中を向けて、逃げ出して行った、あの調子でやる事ったわ』
彼女は憎々しそうに毒づいて居りました。男はむっとしたように黙り込んでしまいましたが、その荒々しい息づかいから推察して、どんなに彼が怒りに燃えているかを私は知りました。