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しょくぎょうのふしぎ
職業のふしぎ
宮本 百合子
「新風土」1940(昭和15)年10月1日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,357 字 · 5 页
作家や評論家というものが、女の生活についてどういう考えかたをしているかということは、一応わかりやすいことのようで案外めいめいにとってもわかりやすくない部分を内部にもっているのではないだろうか。
文学の世代的な性格に即して云えば、石川達三、丹羽文雄、高見順などという諸作家が新進として登場した当時、一時代前の新進は女に捨てられたり失恋したりして小説をかいて来ていたものだが、現代の新人は反対に女を足場にして登場した、ということが云われた。そういう批評には、卑俗なものの云いかたも一面に伴っているのだけれども、それでもやはりそこには無視されない何事かが関係していたことは、それから今日までのこれらの作家の生きかたや仕事の内容に語られている。
大きい歴史のうねりで眺めれば、明治二十年末期の『文学界』のロマンティシズムがその踵をしっかりとつかまえられていた封建の力を、殆どそれなり背面にひっぱったまま大正末から昭和の十年間という時期をも経て、今日の、或る点から云えば極めて高度な近代の秩序に適応していてしかも本質の土台は遠く遠く数百年にさかのぼり得るような状態に来ている。