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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页
警察の連中の乗ったボートや田舟が、岸に近い浅いところを、錨繩を曳きながらゆるゆると動いていた。十分ほど後、平底船は浮標に赤旗をつけた二つの標識の間でとまった。
「ここです」
隆は挑みかかるような調子でいうと、空気ボンべのバルブを調節して、足にゴムの鰭をつけた。そのあたりは、水の色が青々として、いかにも深そうな見かけをしているが、それは側壁に繁茂した水藻の色なので、こんな底の浅い断層湖に吸込孔などあるわけはなかった。
「それがアクア・ラングというものなの? 大袈裟な仕掛けをするのはやめなさい。こんな浅い湖なら、鼻をつまんだまま潜ってみせるわ……ちょっと行って、見物してくるわ」
水に入るのは、何年ぶりかだった。水の楽しさが肌に感じられる。久美子は着ているものをみな脱ぎ捨て、イルカのように湖水に飛びこんだ。上からくる水明りをたよりに、藻の間をすかして見る。十メートルほど下に、側壁のゆるやかな斜面が見える。その先は堆積物に蔽われた湖底平原だった。
上のほうから黒い影が舞い降りて来た。アクア・ラングをつけた隆だった。
「やるつもりだな」
こうなるような予感があった。