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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页

青空文庫

傍にいてあげられればいいのですが、病院の仕事があるので、私は夕方までに東京へ帰らなくてはなりません……母はあなたをロッジへ入れないなんて、愚にもつかないことをいっていますが、気になさらないで、ロッジで今日一日静かにしていらして、いい頃にお帰りになるように」

言い憎そうに眼を伏せ、

「おしつけがましいのですが、今朝のようなことはしないと約束していただきたいのです。さもないと、私は東京へ帰ることができません。それでは困るから……」

と、つぶやくようにいった。

ロッジの二階の大池の部屋に運びあげられると、加藤主任がやってきて、そばの椅子に掛けた。

「やっと人間らしい顔色になった。一時は、だめかと思ったんだが」

はじめからこんな調子でやってくれたら、逆らうことはなかったのだ。久美子は愛想よく微笑してみせた。

「なんのつもりで、呼吸のとまるまで水にもぐったりするんだ? 人騒がせにもほどがある。なにをしようと勝手だが、捜査の邪魔をすることだけは、やめてもらいたいね」

「はずみでやったことなんだけど……お手数をかけました」

「君には手を焼いた。とても面倒は見きれないから、さっさと、どこへでも行ってくれ」