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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页
「おかしいね、それを、どこから見たんだ」
「玄関の脇窓から」
加藤捜査一課は背筋を立てると、頭ごなしにやりつけた。
「絶対にロッジの近くへ寄りつくなといったろう?……まずいことをするじゃないか。感づかれると、やりにくくなって困るんだ」
「いや、どうも……立っていたところに、偶然に窓があったもんですから」
「感づかれたらしいようすはなかったか」
「大丈夫だろうと思います」
「君が大丈夫というなち、大丈夫だろう……つづけたまえ」
「……女は大池を長椅子に寝かせると、洗面器に水を汲んできて大池の胸を冷やしていました。薬だの酒瓶だの、いろいろと持ちだして来て、熱心にやっていたふうです……私の見たのはそれだけ」
「それだけ、というのは?」
「女が窓のカーテンをひいたので、私のいる位置から、なにも見えなくなったということです」
加藤捜査一課は刺激的な冷笑をうかべながら、
「大池とあの女がロッジで落合えば、どんなことをするぐらいのことは、ここにいたって想像がつく」
と、しゃくるようなことをいった。
「君はそんなことを報告するために、伊東までやって来たのか」
「いや、ちょっとお話したいことがあって」