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しぜんびょうしゃにおけるしゃかいせいについて

自然描写における社会性について

宮本 百合子

不詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,820 字 · 12 页

青空文庫

ヨーロッパの自然は、ギリシャ時代、ルネッサンスにあってはアポロだのジュピターだのという伝説の神々の仮名で重々しく擬人化され、美化され、中世紀は、たとえそれは栄光的であるとしても全く人為的な、神学の造化物として描かれた。あのように科学的天稟ゆたかなゲーテでさえも、ファウストの中では、自然と伝説とをこね合わせてロマンティックな描写をしているのである。ヨーロッパの過去の文学では自然が観念的な宗教や哲学的見解を語るための仲介物としてつかわれ、自然と人間とが二元的に相対している。

ルソウは、その文筆的労作の中で、人間を自然の一部としてみ、神話を自然からぬぎすてさせた先達の一人であったが、彼の時代においては、自然を変革してゆこうとする人間の積極的な科学的な社会性の面から自然にとりあげられ得なかった。神学的、宮廷的不自然さに対する自然として強調された。何故ならば、十九世紀中葉までの過去の社会で、文学をつくり、文学を愛好する人々の層は、いわゆる中流以上の有識人の間に限られていた。有識人たちの日暮しは、直接自分の肉体で自然と取組みもしないし、野心満々たる企業家でもなかった。