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まいひめ
舞姫
「國民之友第六拾九號」民友社、1890(明治23)年1月3日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,190 字 · 33 页
胸張り肩聳えたる士官の、まだ維廉一世の街に臨める窓に倚りたもう頃なりければ、さまざまの色に飾り成したる礼装をなしたる、妍き少女の巴里まねびの粧いしたる、かれもこれも目を驚かさぬはなきに、車道の土瀝青の上を音もせで走るいろいろの馬車、雲に聳ゆる楼閣の少しとぎれたるところには、晴れたる空に夕立の音を聞かせて漲り落つる噴井の水、遠く望めばブランデンブルゲル門を隔てて緑樹枝をさし交わしたる中より、半天に浮かびいでたる凱旋塔の神女の像、このあまたの景物目睫の間に聚まりたれば、始めてここに来しものの応接にいとまなきも宜なり。されどわが胸にはたといいかなる境に遊びても、あだなる美観に心をば動かさじの誓いありて、つねに我を襲う外物を遮り留めたりき。
余が鈴索を引き鳴らして謁を通じ、おおやけの紹介状を出だして東来の意を告げし普魯西の官員は、みな快く余を迎え、公使館よりの手つづきだに事なく済みたらましかば、何事にもあれ、教えもし伝えもせんと約しき。喜ばしきは、わが故里にて、独逸、仏蘭西の語を学びしことなり。彼らは始めて余を見しとき、いずくにていつのまにかくは学び得つると問わぬことなかりき。