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まいひめ
舞姫
「國民之友第六拾九號」民友社、1890(明治23)年1月3日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,190 字 · 33 页
さて官事の暇あるごとに、かねておおやけの許しをば得たりければ、ところの大学に入りて政治学を修めんと、名を簿冊に記させつ。
ひと月ふた月と過すほどに、おおやけの打ち合せもすみて、取調べも次第に捗り行けば、急ぐことをば報告書に作りて送り、さらぬをば写し留めて、ついには幾巻をかなしけん。大学のかたにては、穉き心に思い計りしがごとく、政治家になるべき特科のあるびょうもあらず、これかかれかと心迷いながらも、二、三の法家の講筵に列なることにおもい定めて、謝金を収め、往きて聴きつ。
かくて三年ばかりは夢のごとくにたちしが、時来れば包みても包みがたきは人の好尚なるらん、余は父の遺言を守り、母の教えに従い、人の神童なりなど褒むるが嬉しさに怠らず学びし時より、官長の善き働き手を得たりと奨ますが喜ばしさにたゆみなく勤めし時まで、ただ所動的、器械的の人物になりて自ら悟らざりしが、今二十五歳になりて、すでに久しくこの自由なる大学の風に当りたればにや、心の中なにとなくおだやかならず、奥深く潜みたりしまことの我は、ようよう表にあらわれて、きのうまでの我ならぬ我を攻むるに似たり。