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えんしょ

艶書

山本 周五郎

「小説倶楽部」桃園書房、1954(昭和29)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,027 字 · 50 页

青空文庫

「そう思ってくださいまして、出さま」

「自分がいちばんよくわかるはずです」

「本当にそう思ってくださいますのね」

「七重さん」彼は手を伸ばして、そっと彼女の肩を抱いた。

「私はまもなくお役につくことができます、そうしたらね」

七重は彼にもたれかかった。やわらかくもたれかかって、(こんどはあまやかに)低く泣きはじめた。出三郎はその耳へ口をよせてささやいた。

「私がお役についたら……わかりますか、お役について、その時期が来たら――」

七重の泣き声であとは聞こえなかった。七重はいま出三郎の胸にもたれ、よろこびに酔ったような声で泣き続けた。――雛段の雪洞がかすかにまたたいていた。