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はなのさくまえ

花の咲く前

小川 未明

「お話の木」1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,442 字 · 13 页

青空文庫

ひどいめにあわせてくれなけりゃ。」と、叔父は、金づちを手に握って、きたら投げつける身構えをしていました。

「なにも悪いことをしないじゃないか。」と、幸吉は、つくづく叔父さんの顔を見て、どうしてこの哀れな犬だけに無情なことをするのだろう、ほかの犬には、やさしくしてやるのにと思ったのでした。

「あいつが、植木鉢に小便をかけたし、いつかくつが片方失くなったのも、きっとあいつがどこかへくわえていったのだ。」と、叔父は、答えたが、なんの理由もつけずにいじめるのは、自分でも気がとがめるからだと、幸吉には、思われました。

しかし、いまはそんなときでない。ジャックが物置の中に入れられて、戸を閉められたときいては、じっとしてはいられなかったのです。

「なんで物置の中へ入ったのだろうな。」と、幸吉は、あの年を取っていてもりこうで、敏捷な犬がと不思議に思いました。

「犬殺しに追われてきたんだ。逃げ場がないので、物置の中へ隠れたのだよ。」と、叔父は、ところもあろうに、おれの家の物置の中へ隠れたのが、あいつの運の尽きだったと、せせら笑いをしていました。幸吉は、またかわいそうに、自分が平常ジャックをかわいがってやるものだから、助けてくれると思って、家の物置にきて隠れたのだ。