轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はなふぶき
花ふぶき
豊島 与志雄
「風雪」1948(昭和23)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,409 字 · 20 页
それから、浴槽につかろうとする時、千代はいきなり、浴槽の湯を桶にくんで、頭から浴びてしまった。まっ黒なつむじ風を洗い落すつもりだったのだろう。
それはとにかく、そんなことは実に珍らしいのだ。千代はいつも、浴槽のそばにつっ立ったまま、なかなか湯にはいろうとしない。その代り、湯にはちょっとつかったきりで、すぐに出てしまう。その後が困る。両手をだらりと垂れて、流し場につっ立ったきりだ。大勢の人が屈みこんでる真中に、ただつっ立って、なにか考えるように足元に眼をやっている。下腹も恥部も股も、むき出しだ。全然羞恥の感など無いようだ。嘉代さんが桶に湯をくんでやって、さあ洗いなさいと促すと、はじめてそこに屈みこむ。
千代のその姿は、想像しただけでも忌わしい感じを与える。流し場に素っ裸で、両手をだらりと垂れて、どこ一つ隠そうとしない、傍若無人の態度は、もはや一の態度ともいえないほどの下劣さだ。それが而も、へんにだだ白い肌で、体躯のことはおれは知らないが、下駄がちんばにへってるところを見ると、恐らく両脚は不揃いで、顔立といったら、口がゆがみ、眼尻がひどく下り、にやりと笑いそうに頬がゆるんでいて、醜悪といってもよい。