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はなをうめる
花をうめる
「哈爾賓日日新聞」1939(昭和14)年10月15日~10月31日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,555 字 · 7 页
それだけのことである。
だがその遊びに私たちが持った興味は他の遊びとはちがう。おににかくしおおせて、おにを負かしてしまうということや、おにの方では、早くみつけて早くおにをやめるということなどにはたいして興味はなかった。もっぱら興味の中心はかくされた土中の一握の花の美しさにつながっていた。
砂の上にそっとはわせてゆく指先にこつんとかたいものがあたるとそこに硝子がある。硝子の上の砂をのける。だがほんのすこし。ちょうど人さし指の頭のあたる部分だけ。穴からのぞく。そこには私たちのこのみなれた世界とは全然別の、どこかはるかなくにの、おとぎばなしか夢のような情趣を持った小さな別天地があった。小さな小さな別天地。ところがみているとただ小さいだけではなかった。無辺際に大きな世界がそこに凝縮されている小ささであった。そのゆえにその指さきの世界は私たちをひきつけてやまなかったのである。
いつもその遊びをしたわけではない。それをするのは夕暮が多かった。木にのぼったり、草の上をとびまわったり、はげしい肉体的な遊戯につかれてきて、夕まぐれの青やかな空気のなごやかさに私たちの心も何がなしとけこんでゆくころにそれをした。