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はなこ

花子

岡本 かの子

「週刊朝日」1924(大正13)年9月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 763 字 · 2 页

青空文庫

花子には二人の男と二人の女の兄弟があります。花子はそのまんなかに生れました。五つの部屋の真中に花子は眠ります。

晴れ晴れとした春の野辺。ひばりが空高く啼きお陽さまの裳裾がゆらゆらとゆれかがやいて居ます。そして咲き乱れた花が一ぱい! 人は花子のほか誰れも居ません。おかしいとおもいました。少し淋しくありました。が花子は直ぐそれを忘れました。

「摘み草して遊ぼうや」

花子の手近につくしん坊が一本ありました。肥えて丈の高いつくしん坊です。

「つうくし、つうくし」

ぽきんと花子が折ろうとするとつくしん坊は声をあげました。

「おい、亂暴するな。俺は一郎だぞ」

「一郎って私の大きい兄さんの名よ」

「そうだ、俺はお前の兄さんだ」

花子は不平でした。だが、大切な兄さんを折るわけにも行きませんから少し歩いて行きました。一面なつばなです。なかで一番勢いよく穂を立てて居るのを花子は抜こうとしました。

「いたずらするな。僕は二郎だ」

「つばなが二郎さんてあるもんですか私の兄さんつばなじゃないわ」

「いいや、つばなだ、僕は二郎だ」

なるほど二郎の軍人帽の毛にそっくりなつばなです。

れんげ草を摘もうとしました。