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はなこ
花子
「三田文学」1910(明治43)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,950 字 · 11 页
その時戸をこつこつ叩く音がして、戸を開いた。ロダンが白髪頭をのぞけた。
「許して下さい。退屈したでしょう。」
「いいえ、ボオドレエルを読んでいました」と云いながら、久保田は為事場に出て来た。
花子はもうちゃんと支度をしている。
卓の上には esquisses が二枚出来ている。
「ボオドレエルの何を読みましたか。」
「おもちゃの形而上学です。」
「人の体も形が形として面白いのではありません。霊の鏡です。形の上に透き徹って見える内の焔が面白いのです。」
久保田が遠慮げにエスキスを見ると、ロダンは云った。「粗いから分かりますまい。」
しばらくして又云った。「マドモアセユは実に美しい体を持っています。脂肪は少しもない。筋肉は一つ一つ浮いている。Foxterriers の筋肉のようです。腱がしっかりしていて太いので、関節の大さが手足の大さと同じになっています。足一本でいつまでも立っていて、も一つの足を直角に伸ばしていられる位、丈夫なのです。丁度地に根を深く卸している木のようなのですね。肩と腰の濶い地中海の type とも違う。腰ばかり濶くて、肩の狭い北ヨオロッパのチイプとも違う。