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はなこ

花子

森 鴎外

「三田文学」1910(明治43)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,950 字 · 11 页

青空文庫

「マドモアセユはわたしの職業を知っているでしょう。着物を脱ぐでしょうか。」

久保田はしばらく考えた。外の人のためになら、同国の女を裸体にする取次は無論しない。しかしロダンがためには厭わない。それは何も考えることを要せない。ただ花子がどう云うだろうかと思ったのである。

「とにかく話して見ましょう。」

「どうぞ。」

久保田は花子にこう云った。「少し先生が相談があるというのだがね。先生が世界に又とない彫物師で、人の体を彫る人だということは、お前も知っているだろう。そこで相談があるのだ。一寸裸になって見せては貰われまいかと云っているのだ。どうだろう。お前も見る通り、先生はこんなお爺いさんだ。もう今に七十に間もないお方だ。それにお前の見る通りの真面目なお方だ。どうだろう。」

こう云って、久保田はじっと花子の顔を見ている。はにかむか、気取るか、苦情を言うかと思うのである。

「わたしなりますわ。」きさくに、さっぱりと答えた。

「承諾しました」と、久保田がロダンに告げた。

ロダンの顔は喜にかがやいた。そして椅子から起ち上がって、紙とチョオクとを出して、卓の上に置きながら、久保田に言った。