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はなよい

花宵

山本 周五郎

「少女の友」1942(昭和17)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,938 字 · 18 页

青空文庫

「今朝おまえが母上に叱られているのを、おれは襖の蔭からすっかり聴いていたんだ」

「どうしてそんなことをしたんです」

「継の子という言葉が聞えたからさ」

清之助はずばずばとした調子で云った。

「いつか老人の客が『まるで本当の兄弟のようだ』と云ったのはおれも覚えている、けれどもおまえがそれを自分のことだと考えていようとは思わなかった」

「兄上もあれをお聞きになったんですか」

「おまえでさえ聞いたものを二つも年上のおれが聞きのがすと思うのかい、しかもおれにとっては自分のことなのだぞ」

「……兄上」びっくりして英三郎がなにか云おうとするのを、清之助はしずかに制してつづけた。

「嘘ではない、あの老人の客というのは江戸屋敷にいる瀬川主馬という人で、おれのためには母方の祖父にあたるのだ。おれの母は森脇家へ輿入をして、おれを生むとすぐ亡くなったんだ、そのあとへおいでになったのがいまの母上なんだ」

「でも、……でもどうして兄上がそれを知っているんです」

「瀬川のお祖父さまがすっかり話してくだすったんだ、そして『けれどもおまえはいまの母を本当の母だと思え、かりにも継しい考えをおこすようでは武士とは云えぬぞ』