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わかきせだいへのれんあいろん
若き世代への恋愛論
宮本 百合子
「昼夜随筆」白揚社、1937(昭和12)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,340 字 · 28 页
私たちが生きているこの現実の中で、愛し合う可能の下におかれ、めぐりあった相手しか、現実に私たちの愛せるものは存在し得ないのである。その相手と共にこの人生に築きあげてゆく愛の形、最もよく発揮される社会的な発展進歩への価値こそ現実のものである。ふわりふわりと地上から二三尺のところを漂い流れているものがあって、それを何かのはずみで指先にかけつかまえたものが、いうところの幸福な恋愛と結婚との獲得者になるのではない。
近頃唱えられているヒューマニズムの論は、性生活においても、その自由な発露と豊饒さを主張しているのであるが、現実の事情をはなれて、自由や豊饒さを語っても、結局はロマンティシズムに堕ちる。十九世紀の近代社会の勃興期におけるロマンティシズムのような、現実へ働きかける情熱としてではなく、今日の分裂的な恋愛、とくに日本においては、逞しい生活意欲という仮装面の下に、危うく過去のあり来りの男の凡俗な漁色の姿をおおいかくしている結果になる。
ヒューマニズムとは、勇気と沈着さとで我々がおかれている現実の環境とその推移の本質を見とおし、恋愛においても、偸安に便利な条件を左顧右眄して探すのではなく、愛しうるひとを愛し抜こうとしてゆく人間の意志とその実践と、その過程に生まれてゆく新しい社会的価値の発見であると思う。