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くのうのねんかん

苦悩の年鑑

太宰 治

「新文芸」1946(昭和21)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,798 字 · 16 页

青空文庫

更衣の季節で、オサダは逃げながら袷をセルに着換えた。

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どうなるのだ。私はそれまで既に、四度も自殺未遂を行っていた。そうしてやはり、三日に一度は死ぬ事を考えた。

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中国との戦争はいつまでも長びく。たいていの人は、この戦争は無意味だと考えるようになった。転換。敵は米英という事になった。

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ジリ貧という言葉を、大本営の将軍たちは、大まじめで教えていた。ユウモアのつもりでもないらしい。しかし私はその言葉を、笑いを伴わずに言う事が出来なかった。この一戦なにがなんでもやり抜くぞ、という歌を将軍たちは奨励したが、少しもはやらなかった。さすがに民衆も、はずかしくて歌えなかったようである。将軍たちはまた、鉄桶という言葉をやたらに新聞人たちに使用させた。しかし、それは棺桶を聯想させた。転進という、何かころころ転げ廻るボールを聯想させるような言葉も発明された。敵わが腹中にはいる、と言ってにやりと薄気味わるく笑う将軍も出て来た。私たちなら蜂一匹だって、ふところへはいったら、七転八倒の大騒ぎを演ぜざるを得ないのに、この将軍は、敵の大部隊を全部ふところにいれて、これでよし、と言っている。