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ちゃばんによせて

茶番に寄せて

坂口 安吾

「文体 第二巻第二号」1939(昭和14)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,989 字 · 6 页

青空文庫

諷刺する人の優越がある限り、諷刺の足場はいつも危く、その正体は貧困だ。諷刺は、諷刺される物と対等以上であり得ないが、それが揶揄という正当ならぬ方法を用い、すでに自ら不当に高く構えこんでいる点で、物言わぬ諷刺の対象がいつも勝を占めている。

諷刺にも優越のない場合がある。諷刺者自身が同時に諷刺される者の側へ参加している場合がそうで、また、諷刺が虚無へ渡る橋にすぎない場合がそうだ。これらの場合は、諷刺の正体がすでに不合理に属しているから、もはや諷刺と言えないだろう。諷刺は本来笑いの合理性を掟とし、そこを踏み外してはならないのである。

道化の国では、警視総監が泥棒の親分だったり、精神病院の院長先生が気違いだったりする。そのとき、警視総監や精神病院長の揶揄にとどまるものを諷刺という。即ち諷刺は対象への否定から出発する。これは道化の邪道である。むしろ贋物なのである。

正しい道化は人間の存在自体が孕んでいる不合理や矛盾の肯定からはじまる。警視総監が泥棒であっても、それを否定し揶揄するのではなく、そのような不合理自体を、合理化しきれないゆえに、肯定し、丸呑みにし、笑いという豪華な魔術によって、有耶無耶のうちにそっくり昇天させようというのである。