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ちゃばんによせて

茶番に寄せて

坂口 安吾

「文体 第二巻第二号」1939(昭和14)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,989 字 · 6 页

青空文庫

合理の世界が散々もてあました不合理を、もはや精根つきはてたので、突然不合理のまま丸呑みにして、笑いとばして了おうというわけである。

だから道化の本来は合理精神の休息だ。そこまでは合理の法でどうにか捌きがついてきた。ここから先は、もう、どうにもならぬ。―――という、ようやっと持ちこたえてきた合理精神の歯をくいしばった渋面が、笑いの国では、突然赤褌ひとつになって裸踊りをしているようなものである。それゆえ、笑いの高さ深さとは、笑いの直前まで、合理精神が不合理を合理化しようとしてどこまで努力してきたか、そうして、到頭、どの点で兜を脱いで投げ出してしまったかという程度による。

だから道化は戦い敗れた合理精神が、完全に不合理を肯定したときである。即ち、合理精神の悪戦苦闘を経験したことのない超人と、合理精神の悪戦苦闘に疲れ乍らも決して休息を欲しない超人だけが、道化の笑いに鼻もひっかけずに済まされるのだ。道化はいつもその一歩手前のところまでは笑っていない。そこまでは合理の国で悪戦苦闘していたのである。突然ほうりだしたのだ。むしゃくしゃして、原料のまま、不合理を突きだしたのである。