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ちゃがゆのき
茶粥の記
矢田 津世子
「改造」1941(昭和16)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,568 字 · 30 页
鳩は荷箱の上や荷物置場のコンクリートのところを探しものでもするせっかちさで歩きまわっていた。人夫の肩にチョイと止まって屋根のほうへ飛ぶのもあった。屋根にもたくさんの鳩だった。喉の奥で念仏を唱えているような鳴声で、年功のたったのは羽も衰え何か億劫げだった。陸橋の下にトタンの大きな板があって、そのあわいが鳩の巣になっているらしかった。陸橋もトタン板もその下を走る汽車の煙で真っ黒になり、そんなところに巣がけしている鳩の姿があわれに見えた。
さっきから危なっかしいトタンの端であちこちしていた二羽の鳩が、前後して線路に下りたかと思うと、すっぽかすようにすぐに一羽がトタンへ戻った。踵を返すといった慌てかたで残された一羽が追いかけたけれど、見向きもされない。どこまでも引き添い追って行く。身を寄せ嘴をこする。背にとまりかけては羽搏き出される。清子は何がなし眼を逸らした。
霊泉寺温泉の宿に着いた頃は、さすがに姑も疲れていた。途中、長々と乗合に揺られてきたせいもある。しかし姑は湯に入るとすぐ元気になった。蛇口の湯でうがいをしたり、みんながするように濡れ手拭を頭にのせたり、清子に足を揉ませたりして上機嫌だった。