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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

「どうも、……」と老人は苦笑いをしたが、急に立って「実はこれを御覧に入れるつもりで」と話をまた道具の方へそらした。

老人が紫檀の書架から、恭しく取り下した紋緞子の古い袋は、何だか重そうなものである。

「和尚さん、あなたには、御目に懸けた事があったかな」

「なんじゃ、一体」

「硯よ」

「へえ、どんな硯かい」

「山陽の愛蔵したと云う……」

「いいえ、そりゃまだ見ん」

「春水の替え蓋がついて……」

「そりゃ、まだのようだ。どれどれ」

老人は大事そうに緞子の袋の口を解くと、小豆色の四角な石が、ちらりと角を見せる。

「いい色合じゃのう。端渓かい」

「端渓で眼が九つある」

「九つ?」と和尚大に感じた様子である。

「これが春水の替え蓋」と老人は綸子で張った薄い蓋を見せる。上に春水の字で七言絶句が書いてある。

「なるほど。春水はようかく。ようかくが、書は杏坪の方が上手じゃて」

「やはり杏坪の方がいいかな」

「山陽が一番まずいようだ。どうも才子肌で俗気があって、いっこう面白うない」

「ハハハハ。和尚さんは、山陽が嫌いだから、今日は山陽の幅を懸け替えて置いた」

「ほんに」と和尚さんは後ろを振り向く。