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くさまくら
草枕
一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页
「どうせ、自分で作るなら、もっと不器用に作れそうなものですな。わざとこの鱗のかたなどをぴかぴか研ぎ出さなくっても、よさそうに思われますが」と遠慮のないところを云って退けた。
「ワハハハハ。そうよ、この蓋はあまり安っぽいようだな」と和尚はたちまち余に賛成した。
若い男は気の毒そうに、老人の顔を見る。老人は少々不機嫌の体に蓋を払いのけた。下からいよいよ硯が正体をあらわす。
もしこの硯について人の眼を峙つべき特異の点があるとすれば、その表面にあらわれたる匠人の刻である。真中に袂時計ほどな丸い肉が、縁とすれすれの高さに彫り残されて、これを蜘蛛の背に象どる。中央から四方に向って、八本の足が彎曲して走ると見れば、先には各眼を抱えている。残る一個は背の真中に、黄な汁をしたたらしたごとく煮染んで見える。背と足と縁を残して余る部分はほとんど一寸余の深さに掘り下げてある。墨を湛える所は、よもやこの塹壕の底ではあるまい。たとい一合の水を注ぐともこの深さを充たすには足らぬ。思うに水盂の中から、一滴の水を銀杓にて、蜘蛛の背に落したるを、貴き墨に磨り去るのだろう。それでなければ、名は硯でも、その実は純然たる文房用の装飾品に過ぎぬ。