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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

余はもう一遍丁寧に撫で廻わした後、とうとうこれを恭しく禅師に返却した。禅師はとくと掌の上で見済ました末、それでは飽き足らぬと考えたと見えて、鼠木綿の着物の袖を容赦なく蜘蛛の背へこすりつけて、光沢の出た所をしきりに賞翫している。

「隠居さん、どうもこの色が実に善いな。使うた事があるかの」

「いいや、滅多には使いとう、ないから、まだ買うたなりじゃ」

「そうじゃろ。こないなのは支那でも珍らしかろうな、隠居さん」

「左様」

「わしも一つ欲しいものじゃ。何なら久一さんに頼もうか。どうかな、買うて来ておくれかな」

「へへへへ。硯を見つけないうちに、死んでしまいそうです」

「本当に硯どころではないな。時にいつ御立ちか」

「二三日うちに立ちます」

「隠居さん。吉田まで送って御やり」

「普段なら、年は取っとるし、まあ見合すところじゃが、ことによると、もう逢えんかも、知れんから、送ってやろうと思うております」

「御伯父さんは送ってくれんでもいいです」

若い男はこの老人の甥と見える。なるほどどこか似ている。

「なあに、送って貰うがいい。川船で行けば訳はない。なあ隠居さん」

「はい、山越では難義だが、廻り路でも船なら……」