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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

男と女は暗き湾の方に眼を注ぐ。星は次第に増す。柔らかに揺ぐ海は泡を濺がず。男は女の手を把る。鳴りやまぬ弦を握った心地である。……」

「あんまり非人情でもないようですね」

「なにこれが非人情的に聞けるのですよ。しかし厭なら少々略しましょうか」

「なに私は大丈夫ですよ」

「わたしは、あなたよりなお大丈夫です。――それからと、ええと、少しく六ずかしくなって来たな。どうも訳し――いや読みにくい」

「読みにくければ、御略しなさい」

「ええ、いい加減にやりましょう。――この一夜と女が云う。一夜? と男がきく。一と限るはつれなし、幾夜を重ねてこそと云う」

「女が云うんですか、男が云うんですか」

「男が云うんですよ。何でも女がヴェニスへ帰りたくないのでしょう。それで男が慰める語なんです。――真夜中の甲板に帆綱を枕にして横わりたる、男の記憶には、かの瞬時、熱き一滴の血に似たる瞬時、女の手を確と把りたる瞬時が大濤のごとくに揺れる。男は黒き夜を見上げながら、強いられたる結婚の淵より、是非に女を救い出さんと思い定めた。かく思い定めて男は眼を閉ずる。――」

「女は?」

「女は路に迷いながら、いずこに迷えるかを知らぬ様である。