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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

「なあに凹んでるんですよ。禿げていりゃ、もっと茶に見えます」

「そうでしょうか。ともかく、あの裏あたりになるそうです」

「そうすると、七曲りはもう少し左りになりますね」

「七曲りは、向うへ、ずっと外れます。あの山のまた一つ先きの山ですよ」

「なるほどそうだった。しかし見当から云うと、あのうすい雲が懸ってるあたりでしょう」

「ええ、方角はあの辺です」

居眠をしていた老人は、舷から、肘を落して、ほいと眼をさます。

「まだ着かんかな」

胸膈を前へ出して、右の肘を後ろへ張って、左り手を真直に伸して、ううんと欠伸をするついでに、弓を攣く真似をして見せる。女はホホホと笑う。

「どうもこれが癖で、……」

「弓が御好と見えますね」と余も笑いながら尋ねる。

「若いうちは七分五厘まで引きました。押しは存外今でもたしかです」と左の肩を叩いて見せる。舳では戦争談が酣である。

舟はようやく町らしいなかへ這入る。腰障子に御肴と書いた居酒屋が見える。古風な縄暖簾が見える。材木の置場が見える。人力車の音さえ時々聞える。乙鳥がちちと腹を返して飛ぶ。家鴨ががあがあ鳴く。一行は舟を捨てて停車場に向う。