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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

「困るよう」と源さんが馬の鼻を撫でる。

枝繁き山桜の葉も花も、深い空から落ちたままなる雨の塊まりを、しっぽりと宿していたが、この時わたる風に足をすくわれて、いたたまれずに、仮りの住居を、さらさらと転げ落ちる。馬は驚ろいて、長い鬣を上下に振る。

「コーラッ」と叱りつける源さんの声が、じゃらん、じゃらんと共に余の冥想を破る。

御婆さんが云う。「源さん、わたしゃ、お嫁入りのときの姿が、まだ眼前に散らついている。裾模様の振袖に、高島田で、馬に乗って……」

「そうさ、船ではなかった。馬であった。やはりここで休んで行ったな、御叔母さん」

「あい、その桜の下で嬢様の馬がとまったとき、桜の花がほろほろと落ちて、せっかくの島田に斑が出来ました」

余はまた写生帖をあける。この景色は画にもなる、詩にもなる。心のうちに花嫁の姿を浮べて、当時の様を想像して見てしたり顔に、

花の頃を越えてかしこし馬に嫁

と書きつける。不思議な事には衣装も髪も馬も桜もはっきりと目に映じたが、花嫁の顔だけは、どうしても思いつけなかった。しばらくあの顔か、この顔か、と思案しているうちに、ミレーのかいた、オフェリヤの面影が忽然と出て来て、高島田の下へすぽりとはまった。