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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

春の星を落して夜半のかざしかな

春の夜の雲に濡らすや洗ひ髪

春や今宵歌つかまつる御姿

海棠の精が出てくる月夜かな

うた折々月下の春ををちこちす

思ひ切つて更け行く春の独りかな

などと、試みているうち、いつしか、うとうと眠くなる。

恍惚と云うのが、こんな場合に用いるべき形容詞かと思う。熟睡のうちには何人も我を認め得ぬ。明覚の際には誰あって外界を忘るるものはなかろう。ただ両域の間に縷のごとき幻境が横わる。醒めたりと云うには余り朧にて、眠ると評せんには少しく生気を剰す。起臥の二界を同瓶裏に盛りて、詩歌の彩管をもって、ひたすらに攪き雑ぜたるがごとき状態を云うのである。自然の色を夢の手前までぼかして、ありのままの宇宙を一段、霞の国へ押し流す。睡魔の妖腕をかりて、ありとある実相の角度を滑かにすると共に、かく和らげられたる乾坤に、われからと微かに鈍き脈を通わせる。地を這う煙の飛ばんとして飛び得ざるごとく、わが魂の、わが殻を離れんとして離るるに忍びざる態である。抜け出でんとして逡巡い、逡巡いては抜け出でんとし、果ては魂と云う個体を、もぎどうに保ちかねて、氤たる瞑氛が散るともなしに四肢五体に纏綿して、依々たり恋々たる心持ちである。