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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

蚤の国が厭になったって、蚊の国へ引越しちゃ、何にもなりません」

「蚤も蚊もいない国へ行ったら、いいでしょう」

「そんな国があるなら、ここへ出して御覧なさい。さあ出してちょうだい」と女は詰め寄せる。

「御望みなら、出して上げましょう」と例の写生帖をとって、女が馬へ乗って、山桜を見ている心持ち――無論とっさの筆使いだから、画にはならない。ただ心持ちだけをさらさらと書いて、

「さあ、この中へ御這入りなさい。蚤も蚊もいません」と鼻の前へ突きつけた。驚くか、恥ずかしがるか、この様子では、よもや、苦しがる事はなかろうと思って、ちょっと景色を伺うと、

「まあ、窮屈な世界だこと、横幅ばかりじゃありませんか。そんな所が御好きなの、まるで蟹ね」と云って退けた。余は

「わはははは」と笑う。軒端に近く、啼きかけた鶯が、中途で声を崩して、遠き方へ枝移りをやる。両人はわざと対話をやめて、しばらく耳を峙てたが、いったん鳴き損ねた咽喉は容易に開けぬ。

「昨日は山で源兵衛に御逢いでしたろう」

「ええ」

「長良の乙女の五輪塔を見ていらしったか」

「ええ」

「あきづけば、をばなが上に置く露の、けぬべくもわは、おもほゆるかも」