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あらほうし
荒法師
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,734 字 · 36 页
からだつきも、浅黒い顔にぐいと一文字をひいたような眉も、々と光りを放つ双眸も、すべてが逞しい力感に充ち溢れていた。相貌がみちがえるようになったのと共に性質もずんと変った、少年の頃から無口だったのがますますひどくなり、偶たまものを云うときにはなにか噛んだものを吐きだすような調子だった、「俊恵さまはお変りなすった」「むかし叡山の荒法師と呼ばれたのはあんな風だったろうか」「いかにも荒法師という風だ……」いつかしらんそういう評判がたちはじめ、やがてその名が近在に弘まってしまったのである。
晩春の或る朝はやく、ひとりの農夫が畑へゆこうとして昌平寺の裏をあるいていた、すると頭の上のほうでとつぜん妙な叫びごえが聞えた、びっくりしてふり仰いでみると、寺の境内にある高い榧の木のてっぺんに誰か人がかじりついていた、まだ足もとは仄暗かったが梢のあたりは明るいので、すぐにそれが俊恵だということがわかった、農夫はもういちどびっくりして、しばらくその異様な姿を見あげていたが、やがて恐る恐る呼びかけてみた、「……俊恵さま、そんなところでなにをしておいでなさる」