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あらほうし

荒法師

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,734 字 · 36 页

青空文庫

のだ、どけ」「いけません、奥には病人がいるんです、待って下さいまし、あれ、……お父っさん」争いは門口だった、「面倒だ、踏みこんで家捜しをしろ」そう呶鳴るのといっしょにばりばりと戸襖を踏みやぶる音が聞えた、――いかん、と自分を制止しようとしたが、俊恵のからだはもう本能的にはね起きていた、制しようがなかった、手早く法衣を身に着け、数珠を手に襖を開けて納戸を出ると、ちょうど押入って来た三人の鎧武者とばったり顔をつき合せた。どちらも思いがけなかったが、顔をつき合せるなり俊恵が「無法なことをなさるな」と云った、自分でも意外なくらい圧倒的な調子だった、「……力もない百姓の家へ土足で踏みこみ、家捜しをするなどとは豊臣公の名聞にも関わりましょう、しずかになさるがよい」「なに……」なにと云ったが相手が法師なので、さすがにかれらも乱暴はできなかった、槍を持ったひとりが大股にすすみ出て、「無法ではない、この家に落人を匿まっておると聞いて検めに来た、家人が邪魔をするから踏みこんだまで、御坊には係わりのないことだ」「それはこなた達の聞き違いであろう」俊恵は平然と云った、「なるほど負傷者は数名いる、重傷でこのあたりに倒れていた