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あらほうし

荒法師

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,734 字 · 36 页

青空文庫

「なにがでございますの」娘はびっくりしたようにふり返った、俊恵はもういちど「本当に頭がさがる」と云った、「人間がみんなおまえのようになれたらな……」

導かれていったのは七兵衛の家のうしろにある栗林の中だった、そこには七兵衛と伜夫婦のほかに村の者が十人ほどいて、いま盛上げたばかりの土饅頭を囲んでひっそりと佇んでいた、みんな黙っていた。俊恵も人々の目礼を黙って受け、しずかに墓の前へいって立った。下草の繁みからおこる虫のこえを縫って、やがて数珠を揉む音と低い誦経が聞えはじめた、更けわたる林のなかは森閑として、経文を唱える俊恵の声は啾々たる鬼哭を思わせる、しばらくすると七兵衛が呟くようなこえでそれに和し、村人たちもそっとそれにつけだした、他聞を憚りながら、しかしいかにも真実のこもった供養が、そうして半刻あまりもつづいたのであった。

それから数日のちに、行田の森で城兵が二十人ばかり斬り死にをしたという評判を俊恵は聞いた。それは真昼のことで、かれらは三の木戸からとびだし、ゆだんをしていた寄手の陣へ面もふらず斬り込んだ、そしてさんざんに敵陣を駆けなやましたが、ついに行田の森へ追い詰められ、ひとり残らずそこで討死をした