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そうし
荘子
岡本 かの子
「三田文学」1935(昭和10)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,362 字 · 25 页
しかし、六尺豊な体躯を持っている赫顔白髪の老翁の太古の風貌を帯べる考えと多情多感な詩人肌の彼の考えと到底一致する筈がない。結局荘子は先哲のどの道にも就かず、己れの道を模索し始めた。
荘子はこころの中一応これを繰返して考えて見たが、いかに自分に敬愛を捧げて居ればとて、眼の前の商人支離遜にそうこまかく話す張り合いもなかった。そこで
「道は却って道無きを道とす、かも知れないよ。つまり、仕官も学問も自分の本当の宝になるものじゃ無くて、詰らないからなあ」
そして荘子は今度は隠退後疎くなって居た世間の模様を支離遜から訊く方の番に廻った。
支離遜の語るのを聴けば聴くほど世の中は変りつつあった。強秦に対抗すべく聯盟した趙、燕、韓、魏、斉、楚、の合従は破れはじめ、これに代って各国別々に秦に従属しようとする連衡の気運が盛になって来た。従って人も変りつつあった。六国の相印を一人の身に帯び車駕の数は王者を凌ぐと称せられて居た合従の策士蘇秦は日に日に落魄の運命に陥り新に秦の宰相であり連衡の謀主である張儀の勢力が目ざましく根を張って来た。洛邑の子供達までが、迎うべき時代の英雄として口々に張儀の名を呼んだ。