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なのはなものがたり
菜の花物語
児玉 花外
「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂、1911(明治44)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,608 字 · 5 页
瞬間の睡眠から醒めた心地で、ぐるりと後ろの方を向くと家が在り、若い女が切りと機を織っている。雪を欺むく白い顔は前を見詰たまま、清しい眼さえも黒く動かさない、ただ、筬ばかりが紺飛白木綿の上を箭の如に、シュッシュッと巧みに飛交うている。
まだこの道は壺坂寺から遠くも来なんだ、それに壺坂寺の深い印象は私に、あのお里というローマンチックな女は、こんな機を織る女では無かったろうか、大和路の壺坂寺の附近で昔の夢の女――お里に私は邂逅ったような感じがした。
不思議のローマンチックに自分は蘇生って、復も真昼の暖かい路を曲りまがって往く……、しかし一ぺん囚われた幻影から、ドウしても私は離れることは能きない、折角覚めるとすればまた何物かに悩まされる。つまり、晩春四月の大和路の濃い色彩に、狂乱し易い私の頭脳が弄られていたのであった。
円いなだらかな小山のような所を下ると、幾万とも数知れぬ蓮華草が紅う燃えて咲揃う、これにまた目覚めながら畷を拾うと、そこは稍広い街道に成っていた。
ふと向うの方を見ると、人数は僅少だけれど行列が来るようだ。だんだん人影が近づいたがこれは田舎の婚礼であった、黒いのは一箇の両掛で、浅黄模様の被布をした長櫃が後に一箇、孰れも人夫が担いで、八九人の中に怪しい紋附羽織の人が皆黙って送って行く――むろん本尊