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なのはなものがたり
菜の花物語
児玉 花外
「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂、1911(明治44)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,608 字 · 5 页
の花嫁御寮はその真中にしかも人力車に乗って御座る――が恰ど自分の眼の前に来かかった。
黄な菜の花や、紅い蓮華草が綺麗に咲いている大和路の旅の途中、田舎の芽出度い嫁入に逢うのは嬉しいが、またかかる見渡す一二里も村も家もない処で不思議でもある、私は立佇って遠慮もなく美しい花嫁子の顔を視入った。
色彩に亢奮していた私の神経の所為か、花嫁は白粉を厚く塗って太だ麗しいけれど、細い切れた様な眼がキット釣上っている、それがまるで孤の面に似ている。ぬばたまの夜の黒髪に挿すヒラヒラする銀紙の花簪、赤いもの沢山の盛装した新調の立派な衣裳……眉鼻口は人並だが、狐そっくりの釣上った細い眼付は、花嫁の顔が真白いだけに一層に悽く見える。少し大きい唇にさした嚥脂の、これも悪どい色の今は怖ろしいよう、そして釣目は遠い白雲を一直線に眺めている。
頓て嫁入行列は、沈々黙々として黒い人影は菜の花の中を、物の半町も進んだ頃い、今まで晴れていた四月の紫空が俄かに曇って、日が明かに射していながら絹糸の如な細い雨が、沛然として金銀の色に落ちて来た、と同時に例の嫁入行列の影は何町を往ったか、姿は一団の霧に隠れて更らに透すも見えない。