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らくご・きょうそれつでん

落語・教祖列伝

坂口 安吾

04 飛燕流開祖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,245 字 · 25 页

青空文庫

田舎には盆踊りというものがある。これが田舎のよいところで、女郎だの淫売などという者はない。年々交際を新にし、寝室への門をひらいて、若者の性生活を適正健康ならしめるのである。鼻介の野郎ときては、十手をちらつかせて大ボラを吹きまくるくせに、この土地では色女が一人もないというシミッタレた野郎である。こういう奴は男の面ヨゴシ、天下の恥カキ者、いい若い者の仲間はずれという奴で、バカかカタワでなければ有りうべからざる奇怪事であるが、よそ者のズルイ目から見ると、それも実直という意味になるらしい怖れがある。江戸は生き馬の目をぬくといって、こういうズルイ奴が現れるから始末がわるい。

だいたい岡ッ引などやろうというのは、天下の悪者、ズルイ上にもズルイ奴にきまっているから、奴めは鼻介と名のる通り、オ君の聟とり話を嗅ぎ当てて、悪計を胸にえがいて江戸を立ってきたのかも知れない。

目明では暮しが立たないから、鼻介は色々の仕事をしていた。トビのようなこともやるし、頼まれれば細工物を作って納めたり、大工仕事でも、井戸掘りでも、なんでもやる。鍛冶屋の店先をかりて、自分の十手を細工したり、カギのようなものをこしらえたり、何に使うか分らないような妙なものをせッせと作ったりすることもある。