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らくご・きょうそれつでん

落語・教祖列伝

坂口 安吾

01 神伝魚心流開祖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,807 字 · 28 页

青空文庫

カスリ傷ひとつないじゃないか。これに越したことはない。めでたい。めでたい」

と、皆々よろこんで、ミソ漬をいれた大きなムスビを五ツこしらえてくれた。

★

カメの女房はひどく膏をしぼられて、亭主というものは一家の大黒柱である。お前も亭主のオカゲで生きていけるんじゃないか。コクツブシとは、お前のことだ。このフウテンアマメが、と多茂平はじめ町内の旦那方に口々に叱りつけられて、この一夜のケリがついた。

家へ帰って二人きりになると、ほんとにアンタすまなかった、怪我はないかえ、さぞ冷めたかったろう、などと、たいへんグアイがいい。いいアンバイだと思ってカメはよろこんだが、翌日になって、腹いっぱい食わせてくれるわけでもない。

「オカカ。オレ、このウチの大黒柱だな」

オカカというのは女房という意味の方言だ。しかし歴とした旦那の家では用いない。裏長屋の言葉である。これに対して、亭主をオトトと云うが、軽蔑しきって云う時には、トッツァという。しかし、トッツァマとマの字がつくと尊敬の意がふくまれる。

カメのオカカはむくれて、

「なんだと。この腐れトッツァ。なにが大黒柱だ。