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らくご・きょうそれつでん

落語・教祖列伝

坂口 安吾

01 神伝魚心流開祖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,807 字 · 28 页

青空文庫

「いばってやがら。なぜ、とびこんだ?」

「あがってやるから、ツルベをおろせ」

「身投げしておいてツルベをサイソクしてやがる。お前、一人であがれるか」

「ミソ漬けのムスビ五ツだせば、あがってやるぞ。五ツだすか」

「ハハア」

ようやく一同は気がついた。さては奴め、前回に味をしめてムスビをサイソクに井戸へとびこみおったか。バカの一念というものは思いきったものだ。しかし、憎い野郎だ。いッそ一晩井戸の底へとじこめて、こらしめてやりたいが、カメのオカカは不精な奴で、ろくにカメの下帯のセンタクもしてやらないから、色が変っている。一晩つけて、それが自然に色が白くなったのでは、町内のものはカメのフンドシの垢をのむことになってしもう。井戸へ漬けておくわけにもいかない。

「お前の願いは、なんでも、きいてやる。ミソ漬けのムスビをウンと食わせてやるから、早くあがってこい」

「そうか。ありがたいな」

大よろこび、スルスルとあがってくる。待ちかまえていた町内の連中が、襟首をつかんで、ひッとらえて、いきなりポカポカなぐりつける。

「この野郎、ふてえ野郎だ。だれがキサマにミソ漬けのムスビをくわせるもんか。