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らくご・きょうそれつでん

落語・教祖列伝

坂口 安吾

01 神伝魚心流開祖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,807 字 · 28 页

青空文庫

カメのとびこんだところは、流れの幅がタップリ二百米はあって、その全部がほとんど背が立たない。この二三里下流へさがると、日本でたった一ヵ所のツツガ虫の生息地で、この区域の川へはいると命が危い。もっとも当時は、人々がそんなことを考えていたか、どうかは分らない。

人々は十数艘の舟をつらねて漕ぎだしたが、カメの姿はどこにも見えない。

「奴め。苦しまぎれに本当に身投げしたのかな。そうすると、大変だが、イヤ、イヤ。一晩中井戸の中にいて平気な野郎だ。バカの智恵というものもバカにはならないぞ。ひょッとすると、沖へ逃げたとみせて、岸の浅瀬に身をひそめて鼻で息をしているかも知れないぞ」

手わけして探しまわっているうち、ふと対岸をみると、カメがオカへあがって一休みしている。

「この野郎」

対岸へ漕ぎよせたのを見すまして、カメは又ドブゥン。気がつくと、反対側のオカへあがって休息している。一同は舟で行ったり、戻ったり、それだけでヘトヘトだ。

「野郎め。姿を一度も見せないで、どうして河を渡りやがるのだろう。よッく水の上を見張ってろ。息を吸いに顔をださない筈はないから」

要所々々に舟をかまえて、目を皿にして見張っている。