轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
「大阪毎日新聞 夕刊」1928(昭和3)年12月3日~1929(昭和4)6月17日<br>「東京日日新聞 夕刊」1928(昭和3)年12月3日~1929(昭和4)6月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,066 字 · 216 页
それを根気よく視つめていると、人形使いもしまいには眼に入らなくなって、小春は今や文五郎の手に抱かれているフェアリーではなく、しっかり畳に腰を据えて生きていた。だがそれにしても、俳優が扮する感じとも違う。梅幸や福助のはいくら巧くても「梅幸だな」「福助だな」と云う気がするのに、この小春は純粋に小春以外の何者でもない。俳優のような表情のないのが物足りないと云えば云うものの、思うに昔の遊里の女は芝居でやるような著しい喜怒哀楽を色に出しはしなかったであろう。元禄の時代に生きていた小春は恐らく「人形のような女」であったろう。事実はそうでないとしても、とにかく浄瑠璃を聴きに来る人たちの夢みる小春は梅幸や福助のそれではなくて、この人形の姿である。昔の人の理想とする美人は、容易に個性をあらわさない、慎しみ深い女であったのに違いないから、この人形でいい訳なので、これ以上に特長があっては寧ろ妨げになるかも知れない。昔の人は小春も梅川も三勝もおしゅんも皆同じ顔に考えていたかも知れない。つまりこの人形の小春こそ日本人の伝統の中にある「永遠女性」のおもかげではないのか。………