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くらのにかい

蔵の二階

豊島 与志雄

「思索」1949(昭和24)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,351 字 · 27 页

青空文庫

彼女が十日に一度ぐらいお詣りする一乗寺の、隣りの家から、貰って来たのである。全身真白で、一本の色の差し毛もなく、眼は水色をしていて、短かめの尾の先端が少し太くなっている。その仔猫をカヨはたいへん可愛がり、子供達にもあまりいじらせず、いつも身辺で遊ばせ、夜は抱いて寝る。二階の隅に、糞便用の砂の箱を置き、それの掃除はいつも自分でする。猫もまたすっかり彼女になつき、彼女が外出する時は、犬のように後を追う。彼女が食べる物なら、たいてい食べる。菓子も食べるし、ほうれん草のうでたのも食べる。卵酒の中にとけてる卵のみも、酒の気をしぼってやれば食べる。

或る晩、二階で、猫がひどくあばれ騒ぐ音がし、それから、猫は階段に出て来て、駆け降りたり、駆け昇ったり、途中に止って身を隠したりした。気が狂ったようでもあり、楽しそうでもあった。カヨが追って来て、猫を抱き取った。

「静かになさい。なんですか、少しのお酒に酔ったりして。」

猫に卵酒を飲ましたのである。

猫の玩具には、ビー玉だの糸巻だのがあるが、新聞紙を小さく切って丸めたのが、いちばん倦きないらしい。その紙のつぶてを投げてやると、猫はあちこちへ転がし駆け廻って遊ぶ。