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ふきもんどう

蕗問答

山本 周五郎

「冨士」大日本雄辯會講談社、1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,898 字 · 14 页

青空文庫

う、以後はきっとお慎み遊ばすよう平にお願い申上げまする」

「分った、……余の思慮が足らぬであった」

義敦は素直に手を膝へ置いた。

「以後は必ず慎むであろうぞ」

「はっ、それ承わって新九郎め安堵を仕りました、過言の儀は平に」

「いや、よいよい、……真らしき嘘は申せ、嘘らしき真を申すな、味わい深きお言葉だな。以後は必ず心しようぞ」

「恐入り奉りまする、これにて私も」

「まあ待て」

義敦は微笑しながら云った。

「新九郎、その方……五月に出府したとき、その小言を申すつもりで参ったのであろうが」

「なんと、仰せられます」

「忘れ寒森、まんまと小言を忘れたうえ、苦しまぎれにおこぜを伴れ帰ったのであろうが、いや隠すな、あのとき浪江を嫁にと申すその方の顔を見て、余は笑うのを我慢しようとどんなに骨を折ったか知れぬぞ、ははははは」

「も、以てのほかの仰せ」

赭くなる新九郎を見て、義敦はますます可笑しくなり、しばらくは声を放って笑った。「よいよい、これで余も笑いのつかえが下りた、それでおこぜの事だが」

と義敦は笑いをおさめながら、「その方が苦しまぎれに伴れ帰ったのは存じておる、余の悪戯であったからいつでも返してよこすがいい、引取って遣わすぞ」