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ふきもんどう

蕗問答

山本 周五郎

「冨士」大日本雄辯會講談社、1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,898 字 · 14 页

青空文庫

「失礼ながら」と新九郎はにやっと笑って云った。

「浪江は私が家の妻に頂戴仕りましたので、殿のおなかだちにて既に仮盃もいたしております、お側へお返し申すなどとは以てのほか、これは平にお断り申上げます」

「なに、では本当におこぜを娶ったと申すか」

「姿容こそ醜けれ、浪江は御家中に二人となき名婦にございます」

「負惜みではあるまいの、新九郎」

「恐れながら」

今度はこっちの番だというように、新九郎はにこにこ笑いながら胸を張って云った。

「新九郎がこうと見込んだ者に、かつて誤りはござりませぬ、なにしろ凡眼ではござりませんでな」

巨きな眼をぎろりと剥いて、寒森新九郎一代の得意な場面であった。