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うすくちしょうゆ

薄口醤油

北大路 魯山人

「星岡 34号」星岡窯研究所、1933(昭和8)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,364 字 · 3 页

青空文庫

今日は簡単に薄口醤油の話をしてみたいと思う。なぜなら、よい料理を作ろうとするには、醤油は重大問題だからだ。

東京人は、主として濃口醤油をもって調理するが、これは深く考えて欲しいものだ。関西の料理は薄口醤油を用いているが、関東に昔から伝わる江戸料理は薄口醤油のあることさえ知らないようで、関西龍野の薄口醤油などほとんど利用されていない。東京人の口福のためにまことに惜しいことだ。まったくここが大事なところなのである。

近年東京にもだんだん関西料理が侵入し、江戸前料理が次第に衰えて来た原因の一つに、調味料としての薄口醤油を用いなかったことがあげられよう。ひと口にいうと、薄口醤油はものの持ち味を殺さない特徴がある。東京の醤油だと、ものの持ち味を殺してしまう危険がある。もう一つは、視覚的にも薄口醤油は白いので、美しく、煮たものが黒くならない。東京の醤油は黒いので、ものによっては見た目の美しさが失われる。味覚の優れた料理人は必ず薄口醤油を用いる。

以上の理由で、気の利いた料理にすることは、必ず薄口醤油を用いなければならない。薄口醤油は濃口醤油よりずっと価が安く、味がうまい。