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はくめい

薄明

太宰 治

新紀元社刊、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,073 字 · 18 页

青空文庫

しかし私は、馬鹿というのか、のんきというのか、自分たちの家族のこれからの身の振り方に就いては殆ど何も考えぬのである。ただ一つ気になるのは、上の女の子の眼病に就いてだけであった。これからいったい、どんな手当をすればいいのか。

やがて妻が下の子を背負い、義妹が上の女の子の手をひいて焼跡にやって来た。

「歩いて来たのか?」

と私はうつむいている女の子に尋ねた。

「うん、」と首肯く。

「そうか、偉いね。よくここまで、あんよが出来たね。お家は、焼けちゃったよ。」

「うん、」と首肯く。

「医者も焼けちゃったろうし、こいつの眼には困ったものだね。」

と私は妻に向って言った。

「けさ洗ってもらいましたけど。」

「どこで?」

「学校にお医者が出張してまいりましたから。」

「そいつあ、よかった。」

「いいえ、でも、看護婦さんがほんの申しわけみたいに、――」

「そうか。」

その日は、甲府市の郊外にある義妹の学友というひとのお家で休ませてもらう事にした。焼跡の穴から掘り出した食料やお鍋などを、みんなでそのお家に運んだ。私は笑いながら、ズボンのポケットから懐中時計を出して、

「これが残った。机の上にあったから、家を出る時にポケットにねじ込んで走ったのだ。