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あしかり

蘆刈

谷崎 潤一郎

「改造」改造社、1932(昭和7)年11月号、12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,413 字 · 78 页

青空文庫

むみなせ川

ゆふべは秋となにおもひけむ

かやぶきの廊渡殿などはる/″\と艶にをかしうせさせ給へり。御前の山より滝おとされたる石のたゞずまひ苔ふかきみ山木に枝さしかはしたる庭の小松もげに/\千世をこめたるかすみのほらなり。前栽つくろはせ給へる頃人々あまた召して御遊などありける後定家の中納言いまだ下なりける時に奉られける

ありへけむもとの千年にふりもせで

わがきみちぎるみねのわかまつ

君が代にせきいるゝ庭をゆく水の

いはこすかずは千世も見えけり

かくて院のうへはともすれば水無瀬殿にのみ渡らせ給ひて琴笛の音につけ花もみぢのをり/\にふれてよろづの遊びわざをのみ尽しつゝ御心ゆくさまにて過させ給ふ」という記事の出ている後鳥羽院の離宮があった旧蹟のことなのである。むかしわたしは始めて『増鏡』を読んだときからこの水無瀬のみやのことがいつもあたまの中にあった。見わたせばやまもとかすむ水無瀬川ゆふべは秋となにおもひけむ、わたしは院のこの御歌がすきであった。あの「霧に漕ぎ入るあまのつり舟」という明石の浦の御歌や「われこそは新島守よ」という隠岐のしまの御歌などいんのおよみになった