轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
らん
蘭
山本 周五郎
「家の光」1948(昭和23)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,247 字 · 21 页
平三郎は下僕をつれて、まだ溶けやらぬ薄氷の張った刈田の間の道をまっすぐに、江戸へ向かって去った。……生之助はその日登城を休み、居間にこもって、終日なにかしていた。昼げも居間でたべるというので、松子がぜんを運んでいった。かれは居間いっぱいに書状や冊子や書きほごを広げ、机に向かって、しきりに何かものを書いていた。
「お片づけ物でしたら、わたくし、お手伝いいたしましょう」
「なに、もうすんでしまった」かれはぜんの前に来てすわった。「……久しくなげやりにしておいたものだから、このとおりだ。あとで、ほごを焼くときに手を貸してもらおうか」
食事のすむまで、かれはついに目をあげなかった。
午後になって日が傾きかけたころ、かれは書状やほごや古い日記などを庭へ持ちだした。松子が附木に火を移して来た。菜圃の一隅に穴を掘って、その中で、かれは書きほごから焼きはじめた。風のない、どんよりと曇った日で、屋敷の裏にある雑木林のあたりに、しきりとツグミの鳴く声が聞えた。
「黒沢は江戸から帰ったら」と、生之助は古い日記をひきさいて火の中へ投げいれながら、しずかな温かい調子で云った。「……帰ったらすぐ正式にあの話を申しこむそうだ。