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とらがり
虎狩
「光と風と夢」1942(昭和17)年7月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,260 字 · 48 页
趙は私の前であまり朝鮮語を使うのを好まないようであった。時々向い側から与えられる父親の注意らしい言葉にも極く簡単に返事するだけだった。
冬の日は汽車の中ですっかり暮れてしまった。鉄道が山地にはいるに従って、窓の外に雪の積っているらしいのが分った。汽車が目的の駅――それは沙里院の手前の何とかいう駅だと思うのだが、それが、今どうしても思い出せない。一つ一つの情景などは実にはっきり憶えているのだが、妙なことに、肝腎の駅の名前は、ど忘れして了っているのだ。――に着いた時は、もう七時を廻っていた。燈火の暗い、低い木造の、小さな駅の前におり立った時、黒い空から雪の上を撫でてくる風が、思わず私達の頸をちぢめさせた。駅の前にも一向人家らしいものはない。吹晒しの野原の向うに、月のない星空を黒々と山らしいものの影が聳えているだけだ。一本道を二三町も行った所で、私達は右手にポツンと一軒立っていた低い朝鮮家屋の前に立止った。戸を叩くと、直ぐに中から開いて、黄色い光が雪の上に流れた。みんながはいったので、私も低い入口から背をこごめて這入った。家の中は全部油紙を敷詰めた温突になっていて、急に温い気がむっと襲った。