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きょこうのはる

虚構の春

太宰 治

「文学界」1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页

青空文庫

これは僕の最大限の君への心の言葉。きょう僕は疲れて大へん疲れて字も書きづらいのですが、急に君へ手紙を出す必要をその中で感じましたので一筆。お正月は大和国桜井へかえる。永野喜美代。」

「君は、君の読者にかこまれても、赤面してはいけない。頬被りもよせ。この世の中に生きて行くためには。ところで、めくら草紙だが、晦渋ではあるけれども、一つの頂点、傑作の相貌を具えていた。君は、以後、讃辞を素直に受けとる修行をしなければいけない。吉田生。」

「はじめて、手紙を差上げる無礼、何卒お許し下さい。お蔭様で、私たちの雑誌、『春服』も第八号をまた出せるようになりました。最近、同人に少しも手紙を書かないので連中の気持は判りませんが、ぼくの云いたいのは、もうお手許迄とどいているに違いない『春服』八号中の拙作のことであります。興味がなかったら後は読まないで下さい。あれは昨年十月ぼくの負傷直前の制作です。いま、ぼくはあれに対して、全然気恥しい気持、見るのもいやな気持に駆られています。太宰さんの葉書なりと一枚欲しく思っています。ぼくはいま、ある女の子の家に毎晩のように遊びに行っては、無駄話をして一時頃帰ってきます。