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きょこうのはる

虚構の春

太宰 治

「文学界」1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页

青空文庫

此の喜劇を読んでゆくと、秩序も構図もなく寄せ集められた「雑多な事実」に満ちている新聞にでも眼を通してゆくような印象を受ける。ここに支配しているものは偶然であり、偶然があらゆる一般的な概念に抗して戦っているのである。』これを写しながら、給仕君におとぎばなし、紫式部、清少納言、日本霊異記とせがまれ、話しているうち、彼氏恐怖のあまり、歯をがつ、がつ、がつ、三度、音たてて鳴らしてふるえました。太宰さん。もう、ねましょう。にやにや薄笑いしていい加減の合槌をうつのは、やめて下さい。――なあんてね。きょうは会社に出勤、忘年会とか、いちいち社員から会費を集めている。酒盛り。ぼくは酒ぐせ悪いとの理由で、禁酒を命じられ、つまらないので、三時間位、白い壁の天井を眺めながら、皆の馬鹿話を聞いていました。それから御得意に挨拶に行き、会員、主任のうちに呼ばれて御馳走になり、カルタをとり、いま帰って、これを書いているのが夜十時です。気がつかれて、手紙を書くのがイヤです。簡単にあとかきます。会社を二月休んだ原因は、或る事から、酔の上、職人九人を相手にして、喧嘩をし、ぼくは、十月二十九日、腕を剃刀でわられたのです。